3年に一度の自民党総裁選は8日告示、20日投開票のスケジュールで行われる。 当初の予想では安倍総理の無投票再選が確実視されていたが、初の女性総理を目指していると言われる前総務会長の野田聖子氏が出馬への意欲を見せていると報道され、政局が流動化の様相を齎してきた。
野田氏は2日札幌市内で開かれた講演会で「自民党総裁は皆さんの審判(無投票)を受けずに首相になって3年間、この国の舵取りをする。皆さんとの絆をきちんと作っておく必要がある」と述べ、改めて選挙戦の必要性を強調した。野田氏はここ数日、総裁選出馬に必要な20人の推薦人確保に向け、「協力してくれる仲間にこつこつと呼びかける」努力を続けていると報道されている。私にも旧知のメディア記者からの問い合わせが喧しいが、告示前日の今日7日時点でも推薦人確保の目処は立っていないようだ。
一般論として、「総理大臣に直結する自民党総裁選は無投票ではなく選挙が行われるべきである」との主張は、ある面では正しい。
選挙期間中の街頭演説や各種の討論会は、テレビを中心としたメディアへの露出といった点で、我が党の政策を国民に広くアピールできるし、人材の層の厚さも知らしめることができる。政党として直に国民へアプローチできることは、我が党への関心と理解が育まれ、国民政党としての支持基盤拡大に大きく寄与すると思う。 だからと言って、野田氏が言う「無投票再選阻止」だけでは立候補の大義とはなり得ないのも事実である。
既に、党内7派閥をはじめ無派閥の各グループからも安倍支持が表明され、安倍総理の再選が確実視される情況も、野田氏の推薦人確保を困難にしていると思われる。 更には、総裁選スケジュールが現下の最重要法案である“平和安全法案”の参院での採決時期と重なり、選挙戦が法案成立に大きな影響を及ぼすことも野田氏には逆風だ。
山東派会長の山東昭子元参院副議長は3日「野田さんが意欲を燃やしているのは頼もしいが、平和安全法案は大事な法案だ。党内での戦いは時期が悪い」と言及したことは、党内事情を象徴的に語っていると言えよう。
今回総裁選が実施されれば、私が党・政治制度改革本部長として取りまとめた総裁選規程ではじめて行われる選挙となる。党員票と党所属国会議員票を同数に割り振り、より開かれた国民政党として党員の意思を反映する制度改革を目指したもので、私としては改革の成果を問う意味で選挙をやって欲しい気持ちもないではない。
このままの状況ではおそらく無投票再選になると予想される。党の総裁を自ら選ぶ党員の権利が行使されないことに、いささか申し訳ない気もするが…。