改革の決め手は国民目線

参議院選挙後、一時は秋の内閣改造が話題に上ったが、結果的には全閣僚が留任した。
政権が発足したのは昨年末。改造となれば大臣の在任期間は僅か10ヶ月となり、いささか短い(私の文部科学大臣在任は10ヶ月であったが…)。10ヶ月では充分に力を発揮することは難しいし、官僚支配と言われている状況にも陥りかねない。

当然のことながら、政権運営上問題がなければ、大臣はできる限り長期間務めるべきだ。一内閣一閣僚という、かつての民主党の主張は正しいと言える。(ただし結果的に民主党政権後半は閣僚ポストのたらい回しが行われたが…)
そして「改造見送り」という今回の選択は正しい判断だ。続投される閣僚の皆さんには、これまで以上の活躍を期待したい。

ただ、一方で、3年3ヶ月の野党時代のツケもあり、自民党内には閣僚適齢期の議員を数多く抱えている。政治の道を進むからには、誰もがポストを望むのも当然だ。閣僚も含めた人事は、政党運営上の難しい課題であり、総裁の腕の発揮しどころでもある。

この秋の一連の人事では、党三役をはじめ主な党幹部も留任し、いささか地味なものとなったが、副大臣や政務官(政府)、常任委員長や特別委員長(国会)については全面的に入れ替えが行われた。
その中で、私は「科学技術・イノベーション推進特別委員長」の任を離れ、新たに自由民主党の「党・政治制度改革実行本部長」に就くことになった。

科学技術政策は私のライフワークである。今後ともこの分野の政策決定に積極的に係わっていくことは言うまでもないが、当面は、党改革・政治改革の実行に全力で取り組む。

一言で党改革・政治制度といっても、テーマは広範に亘る。既に今年の2月に、逢沢一郎前本部長のもとで取りまとめられた実行本部の答申では、「総裁選公選規程の見直し」「候補者選定方法」「予備選挙の実施」「ネット選挙解禁への提言」「派閥問題」「政策立案能力向上対策」「政党助成金要件の改正」「党本部改革」などについて提言がなされている。

そのうち、「総裁選公選規程」は今年3月の党大会で改正が行われ、決選投票に地方票を取り入れる仕組みができた。「ネット選挙解禁」は4月に法改正も行われ、先の参議院選挙から実施されている。一方で、派閥や政策立案能力の問題は、長期間課題とされながら、未だに決定的な方策が見いだせていないテーマだ。

諸外国より「3周遅れ」といわれる国会改革の議論集約も急がれる。既に我が党では、効率的な審議システムへの改善策等を「新しい国会の在り方」として取りまとめている。今後、自・公・民・維新で構成する協議会をスタートし、議論を深める。スピード感を持って結論を得たい。

「民無信不立(民信なくんば立たず)」。課題は多くとも、政治改革の本質は孔子の時代から変わらない。そして、政治への信頼を得るためには、永田町の慣習にとらわれない国民目線に立った政(まつりごと)を行わなくてはならない。

昨年末の総選挙や先の参議院選挙で、我が党にも多くの新人議員が誕生した。これらの新しい議員が日本の政治に新鮮な空気を送り込んでくれるものと期待している。
そして私も、初心を忘れず。同士とともに「ユートピア政治研究会※」を結成した若き日を思い起こし、今一度、理想の政治を求めて改革に挑戦したい。

好天に恵まれた今年の秋祭りも終わり、いよいよ今日から臨時国会が始まる。緊張感を持って審議に臨みたいと思う。

※昭和63年、自民党の若手議員10名が政治改革に挑むべく結成した政策勉強会。