野田内閣発足後最初の世論調査は、軒並み予想外(?)の高い内閣支持率を示した。民主党の支持率も改善し、自民党を逆転している。
世論は、民主党内の混乱、与野党の対立など、不毛の政争に飽き飽きし、総理交代で何かが変わることに期待を抱いているのだろう。これまで2代の民主党政権とは異なる「党内融和優先」「与野党協議重視」の路線改革が評価されていると見るべきだ。
自民党も世論の意思を重く受け止め、単なる反対政党・抵抗勢力と言われないよう、与党政府の政策への対案の立案に心を砕く必要がある。
野田総理は、改革の第一歩として、早速、事務次官会議や経済財政諮問会議の復活に踏み切った。これらの会議の廃止は、誤った「政治主導」の象徴であり、事実上の復活により正しい「政治主導」になることを期待したい。
一方で、挙党態勢づくりの弊害が、相次ぐ閣僚の不規則発言だ。
「放射能を移してやろうか」という鉢呂前経済産業大臣の暴言は、子どもの悪ふざけの次元だし、一川防衛大臣の「素人が自衛隊を指揮するのがシビリアンコントロール」という趣旨の発言も言語道断だ。
臨時国会前の平野国対委員長の言葉=「今の内閣は不完全な状態で、十分な答弁はできない」(しばらく勉強する時間が欲しい?)というのは、事実であり、本音であるのかもしれないが…。
それ故に、臨時国会の会期を短期間(わずか4日間)とし、一問一答形式の予算委員会の開催を拒否するのは許されない。
大臣は任命されれば即時、各省庁の代表として臨戦態勢に入るのが宿命であり、内閣は組閣と同時に国家行政を司る合議機関となる。訓練時間や仮免許期間など与えられない。だからこそ適材適所の人材配置が必要なのだ。
しかも今は、有事対応の時期だ。スピードが求められるのは震災復興の3次補正予算編成のみではない。
「急速な円高と長期デフレ対策」「エネルギー戦略の再構築」「成長戦略の核となるTPP参加問題」「税と社会保障の一体改革」など、すべて早急な解答が求められている。
「政治に空白があってはならない」というのは、民主党の代表選前の言葉だ。だからこそわずか3日間という短期間で新代表を選出したのではなかったのか。
野党の強い反発に逆らえず、民主党も非を認めて臨時国会の会期を月末まで延長したが、山積する課題解決のために、国会は通年開会し、徹底した議論を尽くすという道もあったのではないのだろうか?
国会が生産的な議論の場となるためには、野党側の意識改革も必要だ。
先の総理所信表明演説後の恒例の野党党首インタビュー。今回も相変わらず紋切り型の否定的なコメントしか聞こえてこなかった。
野党は英語でopposition party(反対党)と言われる。だからと言って、政府与党の言葉すべてを否定する必要はない。野党であっても単なる抵抗勢力であってはならないのだ。
意を同じくする部分には素直に賛意を表し、指向が異なる点は厳しく指摘する、そんなコメントがあっても良いと思うし、その方が国民にも論点が明確になり、双方の政策の違いも分かり易いと思う。
本格的な政権交代時代に入った今、与野党の政策が100%異なることはあり得ないし、あってはならない。ともに従来型の発想を転換し、これまでとは異なる政策形成手法、国会運営手法の構築が求められる。
本会議の代表質問ではひたすら安全運転に徹し、官僚が準備した原稿を読みあげる退屈な答弁をくり返した野田総理だったが、予算委員会や党首討論では、抽象的なスローガンでなく具体的な処方箋を自らの言葉で(正心誠意)語ってもらいたい。
そして、我が谷垣総裁も、より良い合意形成に向けた具体的な政策提案で応じて欲しいと私は考える。