先週27日から4日間、事業仕分け第3弾(前半)が行なわれた。
今回の対象は18の特別会計と特別会計を財源とする48の事業である。今年度の特会予算は176兆円、一般会計予算は92兆円だから額だけみると約2倍にもあたる。
挨拶で蓮舫行政刷新大臣は「特別会計の制度そのものに切り込んで行く。全ての特別会計をまる裸にする」と言及した。確かに、実質的に所管省庁の手の内にある特別会計を可視化することは重要である。
だが、一方で蓮舫大臣は、「今回は財源の捻出が目的ではありません」とも言っている。この発言は、昨年の衆議院選挙のマニフェストと明らかに矛盾しているのではないか?
民主党は昨年のマニフェストで、特別会計を含む予算全体を組み換えることで財源を生みだし、子ども手当などの新規政策に充てると主張していたのではなかったのか?
大臣の発言は、特別会計を仕分けても財源は捻出できない=マニフェストは間違っていたと言うことを認めたことになる。
だとしたら実現不可能なマニフェストの主要施策は、凍結又は修正(撤回も)が必要だ。
予算の無駄遣いを厳しく指摘することは評価したいとも思うが、民主党が国民に約束した契約書(マニフェスト)についても、履行できることとできないことを、しっかりと仕分けて欲しいものだ。
ところで昨秋の事業仕分けでは、科学技術予算が厳しい逆風にさらされた。
おかげで、次世代スーパーコンピュータは世界一の座をつかむのが絶望的となった。小惑星探査機「はやぶさ」の後継機開発は、初号機の帰還が話題となった故になんとか復活できた。だが、何にもまして、私が最も残念に思っているのは「最先端研究開発支援プログラム(FⅠRSTプログラム)」の削減(半減)だ。
FⅠRSTプログラムは、分野や段階を問わず、3~5年で世界のトップを目指した先端的研究を推進するもので、使途を縛らない百億円規模の研究費を一人の研究者に委ねる「研究者最優先」の画期的な支援制度である。
京都大学山中教授が開発したIPS細胞(多能性幹細胞)のような、世界をあっと言わせる革新的な発想と成果は、研究者に研究に没頭できる環境を与えるところから芽生える。
確かに、最先端の研究者の選考は至難の業で、成果が得られないこともあるだろう。それは、一種の賭とも言える。ただ、天然資源に乏しい日本が厳しい国際競争を生き抜くには、知恵を磨き、「科学技術創造立国」を目指す以外に道はないことも事実だ。
仕分けにおける説明者の説得力が不足しているとの指摘は真摯に受け止めなければならないが、費用対効果だけでは判断出来ない事業、政策もあるとの認識を、仕分け側にも持って欲しい。
特に教育(人づくり)や研究開発の分野では、成果が単純に予測できない政策も多い。
だが多くの基礎研究が後の人間社会の進歩に貢献した歴史は数多く存在する。
ノーベル賞を受章された小柴昌俊先生は、受賞後に「私のやっている事は、すぐに役に立つとは言えない。10年後に役に立つかも分からない。100年たっても役に立たないかも知れない。でもやる価値があるし、やらなきゃならないことなんです。」と言われていた。
研究開発投資は未来への投資である。「科学技術創造立国」は日本が国際社会で生き抜く唯一の道であることをくり返し重ねて主張しておきたい。