拝啓 内閣総理大臣殿

 先週6日、臨時国会が閉幕した。

 わずか8日間の会期とは言え、菅内閣が誕生して初めての予算委員会、そして参院選後の新ねじれ国会初の論戦だ。

 与野党協調の政策形成の方向が提示されるのか? どのような国会運営の工夫が見られるか? 私は議論の行方に大いに注目していた。

 しかし衆参2日ずつ開催された予算委員会でのやり取りには、正直がっかりさせられた。

 政府の答弁では具体的な政策の方向は語られず、野党への協力要請の繰り返しだ。特に総理は9月の民主党代表選を意識しての党内配慮か、低姿勢の安全運転ばかりが目についた。

 本来ならば今回のような予算委員会の質疑は新内閣誕生直後、参議院選の前に行なわれるべきだった。しかし、民主党は選挙日程を優先して論戦を避けてしまった。

 憲政史上類を見ないこの国会運営を、我々は「暴走」と激しく非難もしたが‥‥

 もし選挙前に予算委員会が開催されていたら、どんな議論になっていたのだろう?

 発足直後の高い内閣支持率に支えられ、菅総理はもっと力強く自分の考えを語れたのではないだろうか。

 消費税の引き上げについても充分に必要性を説明することができ、唐突な印象とはならずに済んだだろう。

 参院選挙での論戦も違った形となり、結果も変わっていたかも知れない。

 民主主義の手順を無視し、人気投票コンテストですませようとしたことが、民主党の敗戦に繋がったとも言える。

 その結果、菅総理は党内外への低姿勢を余儀なくされ、自分のカラーを出せなくなっている。

 今の総理は私の知る菅直人とはまるで違う。

 菅総理、今、貴方が一番に目を向けなければならないのは、野党でも民主党内でもない。

 どうして国民に向けてもっと強いメッセージを出さないのか‥‥
 
 自らの信念に基づいてこの国のあるべき姿を訴えないのか‥‥

 低姿勢や守り一辺到の姿は貴方には似合わない。

 「自分らしさを取り戻すこと」それが今の貴方に最も必要なことだ。