近況報告 令和2年夏

政府は17日、ウイズコロナ、ポストコロナ時代における政権運営の指針となる今年の「経済運営と改革の基本方針2020」(骨太の方針2020)と、成長戦略実行計画を閣議決定した。

骨太の方針では、今回のコロナ禍で露呈したわが国の弱みともいえる社会全体のデジタル化を促進するために、この1年を集中改革期間と位置づけている。東京一極集中の是正や国土強靭化にも改めて言及している。

一方、成長戦力では、兼業や副業など多様な働き方への期待が高まっているとして、新しい働き方の定着を提案したほか、決済インフラの見直し、デジタル市場の対応、オープン・イノベーションの推進などを柱としている。

中でも“骨太の方針”は、来年度予算の方向性を定めるべきものである。それだけに各省庁からの議員に対する強力な働きかけもあり、党内手続きの会議は毎年大いに盛り上がる。今年も党内承認に至るプロセスで、挙手した議員全員に発言の機会が与えられ、4時間にも及ぶ会議もあった。

これらのプランの閣議決定に先立ち、「総合科学技術・イノベーション会議」が開かれた。会合では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で活動が停滞している大学の研究開発やスタートアップ企業への支援を強化するとともに、教育や物流など社会のあらゆる分野でデジタル化を目指すなどとした、新たな科学技術戦略「統合イノベーション戦略2020」が決定された。

統合イノベーション戦略2020は、以下の4つの柱で構成されている。

①新型コロナウイルス感染症により直面する難局への対応と持続的かつ強靭な社会・経済構造の構築

②スタートアップ・エコシステム拠点都市の形成やスマートシティの実現と国際展開などの推進

③研究力を強化するための若手研究者の挑戦支援や、大学等の間での連携による世界に伍する規模のファンドの創設、人文・社会科学の更なる振興

④AI、バイオ、量子技術、マテリアルといった基礎技術や、感染症や自然災害などに対する安全・安心に関する科学技術、環境エネルギーなど重要分野の取り組み強化

特に、③のファンド創設について、安倍総理は「イノベーションの担い手である若手研究者を長期的な視野で支援していくため、ファンド創設などの新しい仕組みづくりを速やかに進めてもらいたい」と指示した。政府は来年度、国や大学、民間企業などの出資で、最大10兆円規模のファンドを設立し、その運用益で「若手研究者への奨学金や大学間で研究データを共有する基盤の整備」に充てる方針である。

世界に目を向けると、ポストコロナを見据えた戦略的な取り組みや水面下における熾烈な競争が既に始まっている。中国はスマートシティを軸とする次世代インフラ整備「新基建」政策を掲げ、2025年までに1兆ドルを超える大規模ハイテク強化計画を打ち出している。米国では、重要科学技術分野において今後5年間で、1,000憶ドルの投資を求める法案が議会で成立しそうだ。欧州でもこの度、経済復興対策を持続的な環境投資と一体と捉え、グリーン対策を主軸に位置づけた7,500億ユーロ(92兆円)の次世代EU復興基金の創設を決定した。

経済社会構造変化を促すのは、科学技術のイノベーションに他ならない。我が国でも今すぐに有効な手立てを講じなくては、世界の流れから取り残される。今回の基金創設の提案は、そんな危機感のもと、私が会長を務めている「科学技術イノベーション戦略推進調査会」から提案されたものである。

ファンド構想は過去にも調査会で議論されてきたが成案には至らなかった。それが、ポストコロナの構造改革議論の中で再浮上。多くの賛同者の協力を得て具体化し、政府の戦略にも位置づけることができた。永年の想いが実現に向けて大きく前進したことに、いまは軽い達成感を覚えている。

ただ、いつまでも達成感に浸っている訳にはいかない。来年度の予算編成に向けて、基金の財源や具体的な使途など、詳細な制度設計を進めなくてはならない。時間は半年足らず、より一層の努力を重ねたい。

今回の骨太では、ここ数年私が主張し続けてきた「高等教育に係る中間所得層の負担軽減策」も、具体的な検討を進める運びとなった。些か忙しくなりそうだが、大変充実した日々を迎えられそうだ。ひとえに支持者の皆様のお陰と感謝している、今日この頃である。

PS 新型コロナウイルスの感染第2波が拡大しつつあります。皆様方も感染防止に留意していただきますようにお願いします。