無信不立

7月2日に投開票が行われた都議会議員選挙、事前予想でも苦戦が伝えられていた自民党は、改選前の57議席から大幅に議席数を減らし、過去最低だった8年前の39議席も大きく割り込み、最終的に23議席にとどまった。

翌日の朝刊各紙の一面には「歴史的大敗」と、大きな見出しで報道された。

前号で言及したように、森友学園や加計学園をめぐる一連の問題、国会終盤の組織犯罪処罰法の強引な国会運営に対する批判から、内閣支持率は大きく低下していた。

自民党にとっては大逆風の選挙になるとは思っていたが、これ程とは予想していなかった人がほとんどだろう。

 

これまでの自民党への高い支持の背景には、「受け皿がない」「他に選択肢がない」といった消極的な事情があったが、都議選では受け皿として小池知事率いる都民ファーストが登場し、自民党批判票を集めた形となった。

 

安倍総理は翌3日朝、首相官邸でのぶらさがり会見で「自民党に対する厳しい叱咤と深刻に受け止め、深く反省しなければならない」と語った。敗因について「安倍政権になって4年半、政権に緩みがあるのではないかという厳しい批判があっただろうと思う。しっかりと真摯に受け止めなければならない」とも言及した。

 

確かに、閣僚による失言や所属議員(特に安倍チルドレンと言われれる2回生)による不祥事など、「緩み」と言われても仕方がない出来事も数多くあった。

ただ、私は「緩み」よりも政権の「驕り」へ反省を求める声を、(地方公共団体の選挙が国政問題に影響されることの是非はともかく、)首都の有権者が示したと受け止めるべきだと強く感じる。

 

絶対的多数を擁して安定的な政権運営を続けてきた安倍政権。

自民党は今年3月の党大会で早々と党則変更し、総裁の3選を可能ともした。

これまで党内でも反対勢力はほとんどなく「安倍一強」といわれる体勢を保ってきた。

 

強いリーダーシップで安保法制をはじめ困難な法案も次々と成立させ、我が党の結党以来の課題である憲法改正も視野に入ってきた。4年半で延べ124の国と地域を歴訪する戦略的外交で、世界を牽引するトップリーダーの一人にも目されている。

その安倍政権を支えてきた国民の支持は、「他に選択肢が無い」という消去法の結果でしかなかったという事実が、今回の都議選で明らかになった。

 

局面を打開するにはまず国民の疑問に一つ一つ丁寧に答え、信頼回復に努めなければないない。前号でも言及したが、その第一歩として当面の課題である加計学園問題について求められれば、国会の場で説明責任を果たす必要がある。

記者会見で言及したように安倍総理は、積極的に国会に出席し丁寧に説明することで信頼回復を果たされるべきと思う。信頼回復なくしては自らの考えを国民に正しく届けることはできない。

 

憲法改正という大仕事を遂行する為にも、まずは信頼回復を最優先すべきだ。

「無信不立」。これまでも度々このコラムで言及してきたが、この言葉の実行が今また求められている。