第2次改造内閣・サプライズ

先週末、第2次菅改造内閣が発足した。

新任は4人と規模は小幅の改造だが、総理代行格であった仙谷官房長官が退いたのだから、質的には大改造と言って良いだろう。

参議院で問責を受けた仙谷氏の退任は、おおかた予想されていたが、「たちあがれ日本」を離党し入閣した与謝野薫氏の入閣はサプライズだった。

昨年の今頃は自民党に所属し、民主党の政策を的確かつ痛切に批判していた人物を閣僚として登用するというのだ。しかも、与謝野氏の主たる役割は、この内閣の命運を握る「社会保障・税一体改革」である。

自民党枠で比例復活当選しながら、離党し、さらに今回は民主党に協力するという与謝野氏の行動については、厳しい批判が寄せられている。

しかし、小泉政権の後半から経済財政諮問会議を取り仕切り、麻生内閣では財務大臣も兼務。官僚とも対等に渡り合う政策能力は、多くの民主党議員とは格段の差がある。この人物なら政治主導の政策決定も現実のものとできるかもしれない。

昭和13年8月生まれ、今年8月には73歳になる与謝野氏。

残された政治人生を、永年の主張である財政再建、社会保障改革と税制改革(消費税率の引き上げ)を実現させるために、まさに死力を尽くされる決意の選択であろう。

ただ、改革実現には国民の理解と信頼が不可欠だ。

今回の行動が私欲によるものでなく、国益のためであることを明示するためにも、国会議員の身分を捨てて入閣してもらいたかった。(国会で一票でも多くの賛成票が欲しい民主党が、それを許さなかったのかもしれないが…。)

このままで、氏の言葉がストレートに国民に伝わるのか?大いに疑問だ。

それ以上に問題なのは、菅総理の言行不一致の姿勢だろう。

相変わらず「有言実行」「熟議の国会」とくり返してはいるが、内閣改造は「問責を受けたからではない」などと、無理に自己を正当化する発言はやめた方が良い。屁理屈の意地を張り続けていては、与野党協議もままならないだろう。

ましてや、「野党が議論に参加しないのは、歴史への反逆行為」といった逆ギレまがいの発言はもってのほかだ。

「今回の二大臣の更迭はスムーズな国会運営のため」「与謝野氏と藤井氏の官邸入りは、現実的な政策運営への方向転換のため」と素直に語った方が、国民にも分かり易い。

党大会では「これまで民主党がやってきた事は方向として間違ってない。もっと自信を持とう」と言われたが‥‥

本気でそう思っておられるとしたら、勘違いもはなはだしい。

マニフェストの見直し(与野党協議の前提)も先行きが暗いと言わざるを得ない。

ネットのインタビューでは「色々と頑張っているのに分かってもらえない」とも‥‥

これでは辞任の記者会見で「国民が聞く耳を持たなくなった」と言われた鳩山氏と同じ事になる。

政治家は結果に対して責任を負わなくてはならない。自らを顧みて反省しない態度は、私には自己保身の為の言い訳にしか思えない。

国民の政治不信・政治離れはピークに達している。

24日に開会される通常国会を、政治の信頼回復に資する政策議論とするためにも、片意地を張らず、より謙虚な姿勢が必要だ。

過ちては則ち改むるに憚(はばか)ること勿(な)かれ (論語より)

間違ったことに気づいたら、改めるのに躊躇してはならない
→誰にでも間違いはあるが、問題は間違いに気づいた後だ。上に立てば立つほど、自分の体面を気にするようになる。素直に間違いを認め改めれば、傷は小さくてすみ、しかもさらに成長できる。