拝啓 菅総理大臣殿

新年も早や10日が過ぎ、日本列島にも徐々に日常が戻りつつある。

新春交歓会での年頭挨拶では、「今年も内外ともに厳しい情況の中での幕明け」との話しが多いが、政治家としては「今年こそ明るい年にする」との決意が必要だ。

近年、「お正月らしさがなくなった」とも言われるが、初詣の長い列を見る限り、日本人にとって、お正月はやはり気持ちを切り換える絶好の機会なのだと思う。

菅総理も心機一転されたのか4日の年頭記者会見はじめ、強気の発言が目立ち始めた。

貿易自由化促進と農業再生、社会保障制度と税制の抜本改革、小沢氏を巡る政治とカネ、内閣改造と党役員人事等々。

その中で私が注目しているのは、「しっかりした社会保障を確立していくために、財源問題を含めた超党派の議論を開始したい。」という発言だ。

かねてより私はこのコラムの中で「社会保障制度改革には超党派の議論が必要だ」と繰り返し主張してきた。その意味で、総理の一歩前進を支持したい。

ただ与野党協議の実現には大きな障害がある。一昨年の衆院選における民主党のマニフェストだ。

総理は7日のインターネット番組で「マニフェストはもう1回見直さなければならない。折り返し地点(衆議院任期)の2年目あたりには行ないたい」と言及された。しかし、私にとってこの発言は「超党派の議論はそれ以降」と言われたのと同じことだ。

マニフェストに示されていたムダ削減による財源捻出は、23年度予算案の編成過程を見ても、既に破綻している。

子ども手当てや高速道路無料化等に対する国民の政策評価も高いとは言えない。

こんなマニフェストをそのままにしていては、野党も協議に乗れないだろう。(私をはじめ多くの同志が机上の空論である民主マニフェストに敗れたのだから…。)

小沢政治と決別した総理なのだから、「マニフェストは国民との約束だから、守らなければならない」と主張する小沢一派への配慮は、もう必要ないだろう。党の総意として、早急にマニフェストの棚上げ、又は見直しを決定してもらいたい。

報道によると、玄葉国家戦略担当相も、訪問先のウランバートル(モンゴル)でマニフェストの見直しに言及したとのこと。民主党政調会長でもある玄葉氏だけに、今後の言動に注目していきたい。

一方の自民党も、このところの衆参の選挙で「社会保障についての超党派の協議を」と公約してきたのだから、条件が整えば協議を避ける理由はない。

今、国民が政治に求めているのは政局より政策の議論だ。

「政局重視の自民党」と言われないためにも、党利よりも国益を優先した賢明な判断が必要なときだ。

あと数年で団魂の世代が、生産年齢層(~65歳)から高齢者層になだれ込み、社会を支える側から支えられる側に回っていく。

若い世代に過度の負担をかけないためには、人口拡大と経済成長を前提とした現行システムのすべてを再設計しなくてはならない。党派を超えて!今すぐに!

それが、政治が果すべき最も重要な「未来への責任」だ。

総理は、「政治生命をかけて、覚悟を決めてやる」とも言われたらしいが、全く同感だ。この課題は「総理の職を賭すに値する」。

「有言実行」が言葉だけに終わらないよう、腹をくくって取り組んでほしい。

これまでもくり返し言及してきたが、「残された時間はほとんどない」。