公務員制度改革

 今国会で私が注目している法案の一つが国家公務員法改正法案である。

 私がこの法案に特別な思いを持つのには理由がある。

 昨年の通常国会で、同法案の与野党協議の窓口役を担っていたからだ。4月の提案から3ヶ月の協議を経て、残る課題は労働基本権(スト権・団体交渉権)の記述方法のみ、あとは民主党内の調整を待つのみとなっていた。

 にもかかわらず、結局、野党の不信任決議案の提出で全ての審議はストップ、3ヶ月の労苦は水泡に帰した。 既に解散総選挙の日程が決まっていたにも関わらず、何故不信任案を提出されたのか…。北朝鮮の船舶検査法も成立見込みとなっている情況で、何故審議拒否する必要があったのか、私は非常に腹立しい思いだった。

 今、政府与党となった民主党は、「政治とカネの議論よりも、政策議論が優先」という主張を繰り広げている。その説を否定はしない。しかし、声高に叫ぶのは、自らの過去の行いを深く反省してからにしてもらいたい。

 さて、今回提出された国家公務員法改正法案では、中央省庁の人事を内閣人事局に一元化し、降格も含め幹部人事を政治主導で行なえる内容となっている。

 基本的な理念は昨年の修正案と同じであるが、人事局が扱う対象者が事務次官から部長級までと広がった結果、約600人の人事を扱うことになる。

 各省庁の幅広い行政分野、様々な職種にわたる約600人もの人物評価、業績評価が一括して公平に行えるのか?はなはだ疑問である。

 それ以前に、このような人事システムに一気に移行することが可能なのだろうか?アメリカやイギリスのような猟官制度は、その人材供給源となる政策シンクタンクが多数存在するからこそ成り立っている。

 ある意味で、政策立案を霞ヶ関の官僚の能力に(少なくとも当分の間は)依存せざるを得ないわが国には、ちょっと不適合、機能不全を生じるのではないか。

 将来的には、政党の政策立案能力に磨きをかける必要があることは言うまでもない。
 
 しかし、民主党新人議員は言うまでもなく、ベテラン議員と言えども(官僚OBはさておき)、法律案を自ら作成し、複雑な税制を自ら動かせる人材は希である。

 今は、政治主導にこだわるよりも、官僚が誇りを失う事なく省益を超えて、国家のために仕事ができるシステムを構築すべきではないだろうか。

 政治家に必要な資質は、有能なスタッフの能力を十分に惹きだし、有効な政策を立案、実行させることである。

 原案どおり可決されるのであれば、恣意的な人事を防ぎ、公平な評価で、官僚のモチベーションを高める制度運用を国会の議論で明らかにするべきである。