144ゲームの価値

大きく引き離されていた巨人との差を5ゲーム差までに縮小し、8月26日から首都決戦に乗り込んだ我らが阪神タイガース。3タテなら一気に2ゲーム差、久方ぶりの“阪神優勝!”“逆転優勝!”の文字が阪神ファンの脳裏をかすめ、私も内心大いに期待し一人盛り上がっていたのだが…。
残念ながら東京ドームでの対巨人3連戦は全敗に終わり、久しぶりに甲子園に戻っての広島戦も負け越した。首位巨人の背中は再び遙か彼方の8.5ゲーム差に遠ざかり、優勝マジックも19まで減少してしまった。

いつか来た道、いつもながらの風景と言えなくもないが、私にとっての今年のセリーグペナントレースは終わったも同然だ。
かつて“死のロード”と言われ苦難を極めた高校野球大会中の長期遠征も、京セラドームを準ホーム球場としてからは昔話。今年は登り調子でロードを締め括り、甲子園に凱旋する予定であったが、至極残念である。
ここに至っては、クライマックスシリーズ(以下、CS)で勝ちを収めて日本シリーズに駒を進め、日本一を狙って欲しいと願うのみだが…。

そのCSについて、先日、ある野球解説者がその制度改善を提言されていた。私もペナントレースと日本シリーズの関連づけを考え直すべきだと思う。

数年前、ロッテがリーグ3位からパリーグのCSを制し、その余勢を駆って日本シリーズでも優勝を遂げたことがある。ルールに従ってそういう結果になったのだが、チョット違和感を憶えたのは私だけではないだろう。
今年のセリーグは、巨人・阪神が他の4チームを引き離している。現在3位の広島は借金を9つも抱え、残り25試合程度で勝率5割を確保するのは至難の業だ。
それだけチーム力に差があるということかも知れないが、勝負はやってみなければわからない。特に短期決戦ではラッキーボーイの出現やちょっとしたミスで流れが決まることがよくある。
つまり、リーグ戦で5割にも達しないチームが、リーグ代表となり日本シリーズに出場。そして、日本一になる可能性もあるのだ。

加えて、CSの1位と2位、2位と3位のアドバンテージの設定にも疑問がある。
現行ルールでは、いくらゲーム差がついていても上位チームのアドバンテージは1勝のみ、10ゲーム引き離してもゲーム差なしでも同じだ。これでは順位決定後のレギュラーシーズンは完全に消化試合になってしまう。例えば、リーグ戦での5ゲーム差はCSの1勝に置き換えるというような工夫が必要ではないかと思う。

「CSは日本シリーズ出場チームを決める手続きに過ぎない。レギュラーシーズンとポストシーズンは別物。」と言ってしまえばそれまでだが、本来、日本シリーズは各リーグのチャンピオンが競い、日本一のチームを決定するものではなかったのか? 144試合のペナントレースの結果を重視した日本一決定戦のルールを設けてもらいたいものだ。

今年のプロ野球は、密室で決定された「飛ぶ試合球」問題で物議をかもしたが、民主主義のルールづくりはオープンな議論が基本。政府では、先週、来春からの消費税の引き上げの是非について、60人もの有識者から意見を聴取し、「十分な対策を前提に、予定通り4月の引き上げを支持する者が大勢」と総括した。 
CSも含めたプロ野球のポストシーズンのあり方についても、ファンの声を聞き、大いに議論してもらいたい。(と言いながらも、今年に限れば、われわれ虎キチはCSでの大逆転を秘かに期待しているのだが…。)