秋の夜長…part3…イソップ物語

自民党は、「年内解散の確約がなければ国会審議に応じない」という強行路線(北風路線)から、野田総理が解散の条件としている3課題の解決に協力する方向(太陽路線)に作戦を転換した。
総理が「近いうち」の次に掲げた解散時期の条件は、①赤字国債発行のための特例法案の成立、②衆院小選挙区「一票の格差」是正、③社会保障制度改革国民会議の設置の3課題が処理できたとき、である。「近いうち」が3ヶ月以上の期間を指すとは予想できなかったが、まさか、3課題をクリアしたら「実はもう一つ課題がある」と言われることはあるまい。(これまでの民主党の振る舞いを見ていると完全に否定はできないが…)

私はこのコラムで一貫して太陽路線を主張し、兵庫県第10選挙区支部長として、永田町の執行部に再三にわたり訴えてもきた。今回の自民党の路線転換を率直に歓迎したい。

民主党政権は、「野党が反対する。審議をボイコットする。だから、重要法案がたなざらしになって国民生活が犠牲になる」と主張し、自らの無策を野党に責任転嫁してきた。
政策実行の第一義的な責任を負っているのは与党である民主党である。それなのに重要法案成立に全く無頓着、何ら新提案を行う努力もせず、野党のごとく相手(自公)の批判を唱え続けるだけだ。
いつまでも野党時代の悪癖がとれず、自ら解決策を生みだす知恵が浮かばないのか? それとも、単にできるだけ衆院選を先延ばしして、保身を図りたいということなのか?

かつて、我々自民党が与党時代、理不尽な野党民主党の攻撃をしのぎ、政策を前に進めるため、懸命に知恵を絞り妥協策を提示してきた。
だが、今の民主党に与党としての振る舞いが期待できないのであれば、我々自民党は、たとえ野党であっても、我が方から解決策を提示する方法(太陽路線)で政局混乱の事態収拾を図るべきである。そのことにより、責任政党の手本を民主党に示すのが、永年政権を担ってきた自民党の採るべき選択であると強く思う。

「北風と太陽」は、ご存じのとおり有名なイソップ寓話の一つ。寓話の起源は、紀元前6世紀に遡ると言われる。それが西洋のキリスト教文化の中で受け継がれていくうちに、単なる娯楽的な物語から道徳観を示す教訓集としての意味合いも備えてきたようだ。
江戸時代初期には日本にも伝わり、「伊曽保物語」として普及した。明治以後には、修身教科書の素材として、童話として、広く親しまれるようになった。「アリとキリギリス」「ウサギとカメ」「北風と太陽」など、誰もが知っている物語だ。

その一つに「オオカミ少年」がある。
人は嘘をつき続けると、たまに真実を言っても信じてもらえない。常日頃から正直に生活することが必要な時に信頼と助けを得られる、という訓話である。
たとえ嘘をつく意図はなくとも、結果が得られない言葉が山積すれば、嘘をついたのと同じ効果が生じ、誰も発言を信頼しなくなる。

政治は結果責任だ。
民主党の議員諸君には、この寓話の意味するところを噛みしめて欲しい。
嘘を承知で前回衆院選のマニフェストを作ったとは言わないが、実現できないマニフェストに結果責任を感じ、猛省して欲しいものだ。
苦しい弁解をしているだけでは、政治の信頼回復は望めない。

それにしてもイソップ物語には、時を超え今の世にも通用する教訓が多いと改めて感じた。
今は読書の秋である。
秋の夜長、童心に返ってじっくりイソップ物語を読みふけるのも良いかもしれない。ただ、解散風が吹き始めた今、私にはそんな時間の余裕はなさそうだ。