エネルギーをどうする

国会は、当面、消費税増税問題で手一杯の様相だが、数多ある政策課題のうちで早期決断が急がれる課題の一つが、エネルギー政策ではないだろうか。
温暖化ガス25%削減を打ち上げ、原子力の活用拡大へと大きく舵を切っていた民主党のエネルギー政策を一瞬で打ち砕いた東日本大震災。その発災からもう一年になるというのに、この夏に向けて、原子力発電所の再稼働をどうするか?という議論が全く煮詰まってこない。

震災から2ヶ月後の昨年5月、菅直人前首相は突如、浜岡原発の停止命令を下した。非常事態下の対応でもあるので、今さらその適否は問わないが、その後の平時体制への移行が全く為されていない。

全国の原発のうち政府が危険と判断して強制停止させたのは浜岡のみ、それ以外は震災後も一応安全という判断だからこそ継続運転していたはずだ。それが定期点検のために停止したとたんに不良品のごとく再稼働できなくなるというのが、今の国内ルール。間もなく54基、すべての原発が稼働を停止する。

一方で、新しい原発の海外への輸出についてはこれからも継続する方針が既に決定している。いかにも矛盾しているというか、バランスを欠いた政策だ。

自然災害やテロに対して脆弱な原発があるとしたら、耐用年数を待たずに廃炉にするという判断もあるだろう。逆に安全性の基準を国民に明確に示し、それをクリアした原発は、早急に発電を再開すべきではないのか。(そもそも、何が危険かという基準を定めずして稼働停止させるから国民の不信を招いたのだ)
目の前に差し迫った問題として、原発をすべて停止した状態では通常の産業活動は維持できない。来夏のエネルギー需要期に、仮に化石燃料で量的な問題を確保したとしても産業界はエネルギーコストに耐えられなくなるだろう。

長期的には自然エネルギーを増やしていくとしても、ヨーロッパ諸国のようにはいくまい。
ドイツやデンマークなど自然エネルギー重視の政策を目指している国々は、大陸国だ。いざとなったら簡単に電気やガスを隣国から輸入できる。ドイツは、フランスの原子力発電所から繋がる送電線があるからこそ、ロシアからの天然ガスパイプラインがあるからこそ、大胆なエネルギー転換政策が実行できるのだ。

日本は良くも悪くも島国で、資源に乏しい。船便に依存する化石エネルギー輸入は当然に高コストとなる。加えて、ペルシャ湾に石油、天然ガスの9割を依存している現状では、エネルギーの安定調達自体が中東の政治情勢に大きく左右されている。

かといって水力も含めて10%足らずの自然エネルギーのシェアを数年で急拡大できるものでもない。日本近郊のメタンハイドレート(メタンと水の結晶)の活用も商業実験に入ったばかりだ。
原発が担っていた30%の電力は、当面、火力で担うことになる。その結果は電力価格の高騰となり、製造業の海外移転に拍車をかけることに繋がりかねない。
昨夏は、かなりの原発が稼働していたからこそ総力を挙げた節電で対応できた。とは言ってもメーカーは自家発電装置をフル稼働させているのだから、かなりのコスト増になっている。

エネルギー政策は産業政策の根幹をなす要素の一つだ。
国内に製造業を残す意思があるのであれば、原子力の即時放棄という選択肢はあり得ない。
さらに、世界に目を向ければ、今後も人口増大が続き、一人ひとりの生活水準も向上しつつある。世界的視野でエネルギー需給を考えると、原子力は放棄するのではなく活用すべき資源である。そして、我が国の務めは、貴重な教訓と技術力を生かして、安全で効率的な原子力技術を確立し、世界に貢献することだ。

政府は、原子力を安全に維持活用していくための議論を避けてはならない。まずは、一日も早く、原発の再稼働に向けた安全基準を明示すべきだ。