国民の声

新年が明けて早や10日が過ぎた。年末年始恒例の民族大移動も一段落し、街行く人々の姿にも日常生活の空気が漂い始めている。
そんななか、総選挙が視野に入ってきた永田町では、通常国会召集を前にして対決モードを前面に押し出した発言が目につく。

我が国の内政を見渡せば、数ある課題の中で、まず、最優先で処理すべきは消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革だろう。
「不退転で臨む」「私のこれまでの政治生活の集大成」と、この問題についての野田総理の決意は並々ならぬものがある。昨年末には自ら民主党税調で弁舌をふるい、何とかかけ込みで政府素案のとりまとめを終えた。そして、「誰が政権を担当しても避けて通れない問題」と、野党に協議を呼びかけようとしている。

だが、一方の野党側は「マニフェストで言及していない消費税の引き上げ法案を提出するのなら、ケジメとして解散総選挙で国民に信を問うのが筋だ」との主張を繰り返すばかりで、今のところ協議の糸口は全く見えてない。
しかし、このような政局優先の頑な対応には、違和感を覚えざるを得ない。

我々自民党は、2009年の衆議院選挙で「与野党協議会の設置」、2010年参議院選挙で「消費税は当面10%とし、全て社会保障に充てる」とマニフェストで言及した。所得税法附則で「平成23年度までに消費税を含む税制の抜本改正に向けた法制上の措置を講じる」旨を宣言したのも自公政権だ。
これらの主張を鑑みれば、早速、政府素案を吟味し、改善の意見を提示することこそ責任野党のあるべき姿ではないだろうか。

もちろん、総理のサイドにも、野党を協議のテーブルに呼び寄せる努力が足りない。
解散総選挙を経ずして、マニフェストを撤回するに等しい政策転換を行うのであれば、民主党代表として国民にその理由、すなわち過去の政策論の誤りを真摯に説明し、マニフェストを総括する必要がある。
謝罪すべきは謝罪し、その上で消費税引き上げの理解を求めるべきだ。

民主党内には、未だにマニフェストの変更について強い反対意見があるが、苦しい言い訳や辻褄合わせで自らを正当化するべきではない。
「こども手当」を「子どものための手当て」と名称変更するなどに至っては、姑息な方法で笑い話にもならない。
私の年末年始の対面世論調査(忘年会、新年会)でも、誰もが民主党マニフェストの虚構を見抜いていた。
いずれにしても、マニフェストの成果に対する評価は次の総選挙で国民が判断することだ。

総理の度重なる呼びかけにも関らず、自民党が協議の門前払いを続ければ、国益よりも党益優先の政党との非難を受けるだろう。
政府素案には、社会保障給付の削減努力の不足や消費税引き上げ時期の遅さなど改善すべき点も多い。増税より行政改革が先決という声も、もっともだ。
このような政策の中身こそ国政で議論すべきテーマであり、政策論にしのぎを削り、雌雄を決する場が国会である。

マニュフェスト総崩れの民主党にも、政府与党の失政追求に専念する自民党にも、国民はうんざりしている。
来るべき通常国会では、挙げ足取りのごとき非難合戦より、未来に向けた政策形成型の議論を期待したい
。政権奪還はその延長線上にしかないと、私は確信する。