TPP

TPP交渉への参加の賛否を巡る議論が政界を揺さぶっている。
正式名称は環太平洋経済連携協定(trance-pacific partnership)。要するに太平洋を囲む国々が、今後の経済連携のあり方、貿易や投資のルールをどう組み立てていくかという交渉だ。
既に米国、チリ、ペルー、シンガポール、マレーシア、ベトナム、ブルネイ、オーストラリア、ニュージーランドの9か国で交渉が始まっている。この議論に参画することを巡って、賛否が真っ二つに割れている。

人口が減少し、国内需要が縮小する我が国が成長を続けるためには、グローバル経済のなかで新興国の活力を取り込むことが不可欠である。その前提となるのが、自由で公平、公正な市場ルールの構築であることは論を待たない。

何もTPPで無くとも良い、バイラテラル(bilateral二国間)のEPA(economic partnership agreement経済連携協定)、FTA(自由貿易協定free trade agreement)でも構わない。とにかく、新興国との自由貿易のルールの確立無くして日本の経済成長は、覚束ないだろう。(まさか、今さら鎖国的政策により、国内に縮み込むとういう選択はあるまい。)

世界の工場の座は、既に中国、東南アジア諸国に譲った。これからは量よりも質で勝負する時代、我が国経済のよりどころは、知的財産権の確立と活用だ。
強烈な円高に打ち勝つためにも、他の追随を許さない技術、知恵を磨くとともに、その価値を世界共通のものとして確立しなくてはならない。

TPPで米国と日本が連携し、ルールを作りあげれば、それは世界経済の4割を占める原則となり得る。
我が国の強力なライバルとなった韓国は、既に開国政策に積極的に取り組み、米国やEUと自由貿易協定を締結している。
出遅れを挽回し日本がアジアのリーダーとして世界と勝負するには、TPPを通じて、国際ルールの構築に積極的に参加するべきである。

決して受け身になってはならない。ルールを作れるのは、ルール作りの場に参画した者だけなのだ。
既に遅きに失した感はあるが、最終リミットは11月12日からハワイで開催されるAPECだ。この機会を見過ごせば、我が国は、他人が作ったルールを飲むか飲まないかの選択しか許されなくなる。

農業に従事される方々もおそれることはない、安全安心な日本のコメや野菜はアジアの市場で高値で取引されている。良質の農作物を作れば、農業も新たな輸出産業となることができる。
TPP協議への参加をピンチでなくチャンスと捉え、競争力のある強い農業への構造改革を目指すべきであり、政府はその為のあらゆる政策を講ずるべきである。
まずは、バラマキ所得補償制度を再構築し、かつての自民党政権時代の路線のように大規模専業農家の育成をめざすことだ。

今回のTPPに関する議論は、政府からの情報提供があまりにも少なく、国内に多くの不安をもたらしている。関係者の不安を払拭するためにも、政府はしっかりと説明責任を果たさなければならない。

残された時間は限られている。攻めの通商政策、攻めの農業政策を立案することこそ、国益に通ずる。
アジア太平洋の発展のために、TPPへの早期参画を契機に、日中韓のEPA、ASEAN諸国も含んだ広域自由貿易体制を早急に確立しなくてはならない。
その為にも、今週から始まる予算委員会で政府は説明責任を果たし、国民の不安を取り除いて欲しい。
野田総理の本気度をしっかり見極めたいと思う。