高等教育無償化…出世払い

改正民法が4月1日に施行され、民法制定(1876年)以来初めて成年年齢が20歳から18歳に引き下げられた。今回の改正の目的は、「自己決定権を尊重し積極的な社会参画を促す」ためだ。例えば、携帯電話を契約する、一人暮らしの部屋を借りる、クレジットカードをつくる、といった行為が親の同意なしに自分一人でできるようになる。

親権に服さなくなるという意味では、住む場所、進学や就職などの進路なども自分の意思で決定できるようになる。この「親の考えに関わらず自分の意思で進路を決定する」との考え方は、我々がこれまで党内で進めてきた“出世払い方式による高等教育の支援策(J-HECS)”の考え方のベースにもなっている。

現在、日本の大学生の大半は、親に学費や生活費を負担してもらわざるを得ない。それ故に、自分の意向に沿った進路選択ができないケースも多い。

「出世払い」方式はオーストラリアなどが採用している制度で、授業料や入学金を政府が立て替え払いし、学生は在学中の学費支払いが不要となる。卒業後、一定の年収を得られるようになった段階で、所得に応じた額を分割納入する仕組みだ。この方式であれば、親の経済力に左右されず、自らが望む学びの場にチャレンジすることができる。

一方で親の立場から見ると、教育費をはじめとする子育て経費の負担が、子どもをつくる際の最大のハードルとなっている。少子化を克服し、急速な人口減少速度を緩和するためにも、教育費の軽減は重要な政策課題である。高校まではすでに無償化されており、大学等の高等教育対策が急がれる。

私はここ数年来、党・教育再生実行調査会で「恒久的な教育財源確保に関する調査会チーム」の主査として、高等教育無償化のスキームづくりに取り組んできた。J-HECSはその解決策の有力な選択肢である。財源負担も小さく、私は最も現実的かつ公平な解決策であると考えている。が、党内では賛否両論がある…。

反対意見の主なものが、「教育費は本来親が負担すべきもの、親世代の負担を子世代に先送りすべきでない」というもの。世論調査では「親が負担すべき」との回答が5割を超えているが、世代間で意見が分かれる問題である。

「新しい資本主義」を掲げる岸田文雄総理の目玉政策の一つが中間層への再配分強化であり、具体的には子育て世代への住居費や教育費の支援である。3月30日の教育未来創造会議で総理は、「教育人材育成、人への投資は成長の源泉だ」と言及し、「出世払い」方式の奨学金制度の創設検討を指示、5月中に制度設計を含めた提言をまとめるよう、末松信介文部科学大臣に求めた。

今後、「成長、教育・人材力強化調査会」で議論が深められるが、人への投資として「新しい資本主義実行本部」の提言でも取り上げられる予定である。様々な論点があり、2か月で意見集約するのはかなり難しい作業になると思うが、今回がラストチャンスと考え、実現に向けて最大の努力を傾注したい。

※J-HECS= Japan-Higher Education Contribution Schemeの略