雨後の筍

今国会での成立が予定されている法案も、土地取引規制法案を残すのみとなり、

会期もあと僅か。政治の舞台は国会での論戦から7月の都議選、または秋までに

行われる衆院選や自民党総裁選へと移っていく。



 毎年この時期に作成される、来年度予算編成にむけた政府の成長戦略と経済財

政運営に関わる基本方針(いわゆる骨太方針)の党内議論も終了した。比較的静

かになってきた永田町ではあるが、党内ではこのところ派閥の幹部が発起人にな

る新しい議員連盟が“雨後の筍”のように次々と設立され、政局の匂いをかぎとっ

てかメディアの注目を集めている。その皮切りとなったのが、前回コラムで言及

した「半導体戦略推進議員連盟」だが、先週末にも新しく2つの議連が発足し物

議をかもしている。



 一つは経済政策を新たに議論する議連で、会長は岸田文雄前政務調査会長。半

導体議連同様AAAが雛壇に並んだ設立総会には週末の午後にもかかわらず自民

党国会議員145人が出席した。岸田会長は、一部の富裕層に偏っていると指摘さ

れる富の再配分の在り方などを議論したいとした上で、「国民が幸せを感じられ

る資本主義のモデルを考えたい」と訴えた。



 続いて、開始時間を1時間ずらして開催されたのが甘利明税制調査会長をトッ

プとする「未来社会を創出する、バッテリー等の基盤産業振興議員連盟」。EV

=電気自動車の基幹部品となる蓄電池の競争力強化を目指す議連である。安倍氏

はここでも最高顧問に就任し、会の冒頭であいさつをしている。設立趣意書には

次世代の電池開発について「これを制するものが世界を制すると言っても過言で

はない」と強調され、経済安全保障の観点から安定的なサプライチェーン(供給

網)の構築する必要性も指摘している。



 さらに、15日には二階俊博幹事長が「自由で開かれたインド太平洋」を推進す

るための議連を発足することが決まっている。が、半導体議連勉強会と開催時間

が重なり、双方に参加している私はどちらに出席したものかと頭を痛めてい

る・・・。



 そんな中、政局とは全く関係ない議連が立ち上がった。持続可能な財政を実現

する目的で設立された「独立財政推計機関を考える超党派議員の会」である。

 政府から独立し経済や財政、社会保障の将来推計をおこなう機関の国会設置を

目指す。

 林芳正(自民)、逢坂誠二(立民)両氏のほかに、松本剛明(自民)、浅田均

(維新)、古川元久(国民)、西田実仁(公明)、大門実紀史(共産)の7氏が

共同代表。発起人には39人が名を連ねた。


 
 10日の設立総会で共同代表発起人の林参院議員は、「諸外国の動向を踏まえ、

この機関の設立は国会の機能強化であり、超党派で取り組むべき課題だ」と、逢

坂衆院議員は「国会の予算に対する機能は極めて弱い」と問題視した上で、「緊

縮・拡大財政のいずれを考える上でも、国会がしっかりとした機能をもって財政

推計できるのは極めて大事だ」と述べた。



 独立財政推計機関は政府の判断や推計に左右されず、国会が客観的なデータを

基に財政運営の監視機能を果たす。実現すれば、政府提出データをめぐる国会で

の不毛な議論がなくなるだけでも大いに有用である。リーマンショックや欧州債

務危機を経て、経済協力開発機構(OECD)の大半の国で導入されている。日本で

も一日も早く実現すべきと考えている。



 あれやこれやで今年もはや半年が過ぎようとしている。すでに30度を超える夏

日が到来し、今夏の猛暑が予感される。7月にはふるさと兵庫の知事選が行われ

る。秋までにはわれわれ衆議院議員は、必ず国民の審判を仰がなければならない。

 何かとストレスの多い毎日が続いているが、我らが阪神タイガースの快進撃、

首位独走が心に潤いを与えてくれる、今日この頃である。



 AAA=安倍内閣のキーマンだった安倍、麻生、甘利のイニシャルから、メディ
アはスリーエーと呼ぶ。