10月の総選挙から早や1カ月。投票日前も変化の大きい一ヵ月であったが、政界では選挙後も様々な動きが生じている。
過半数越えの235人の候補者を擁立したにもかかわらず、野党第一党を立憲民主党に譲った希望の党は、玉木雄一郎氏が共同代表に就任。その後、党執行部人事を決定する両院議員総会で小池百合子東京都知事が「創業者の責任として代表でスタートしたが、党の方向性は決まっているので、代表の座を降りさせていただく」と党代表辞任の弁を述べた。
昨年7月の都知事選から始まり、都議会選挙、東京五輪の会場施設問題、豊洲市場移転問題、そして今回の希望の党の立ち上げによる衆議院選挙と、連日の様にワイドショーを賑わせていた小池劇場はここに幕を閉じることになった。
また、野党再編の一連の動きのなかで、当初は解党して希望の党に合流すると言われていた参院民進党では、合流を白紙に戻し大塚耕平氏が代表に就任、新体制をスタートさせた。
結局、総選挙を経て民進党は立憲民主党、希望の党、参院民進党、無所属の4つの勢力に分かれることとなった。
現在の選挙制度を考慮すると、次の国政選挙前までには野党の再々編は避けられないと思うが、当面はこの形で何らかの協力関係が模索されるのだろう。
一方、自民党では、総選挙の公約「保育・教育の無償化」についての議論が佳境を迎えている。“政権公約2017”(注1)では、年末までに「人づくり改革に関する2兆円規模の新たな政策パッケージを取りまとめます」と約束しており、党・人生100年時代戦略本部で具体策の詰めを急がなくてはならない。
幼児教育については、社会保障の一環と考えるのか、それとも義務教育の拡大と発想するのかによって、所得制限についての対応が変わってくる。
社会保障なら所得制限を設けるべきだろうし、義務教育に繋がる就学前教育と考えるなら所得制限はなじまない。故に双方の間をとって、3才~5才はすべての子どもが無償となり、0才~2才は所得制限を設けるという案が有力になるのだが。
高等教育については、「真に支援が必要な所得の低い家庭の子どもたちに限って高等教育の無償化を図ります」となっているが、“無償化”の意味については党内でも見解が分かれている。政府内の検討では低所得者層に限って授業料免除(渡し切り)や給付型奨学金の拡充を考えているようだが、それでは対象者が限定されすぎるのではないだろうか?
高等教育をすべての国民に開かれたものにする(教育の機会均等)という本来の趣旨からすれば、“無償化”の意味は「在学中無償化」と捉え、進学を希望する者すべてが恩恵を受ける制度設計を目指すべきと私は主張している。
選挙公約を各候補がどの様に訴え、国民がそれをどの様に受け止めているか?決して一律ではなく、いくらかの差異が生じているだろう。また、公約を政策化する際には、一定の解釈の幅が生じるのも事実だ。しかし、我々には政権与党として、公約の実現を全国民に納得していただく説明責任がある。
閣議決定までのスケジュールを考えると、意見集約までに残された時間はそれ程多くない。しっかりと議論を尽くし、政策を練り上げ、皆様にお示ししたい。
(注1) 自由民主党「政権公約2017」(抄)
〇幼児教育無償化を一気に加速します。2020年までに、3歳から5歳までのすべての子供たちの幼稚園や保育園の費用を無償化します。0歳から2歳児についても、所得の低い世帯に対して無償化します。
〇真に支援が必要な所得の低い家庭の子供たちに限って、高等教育の無償化を図ります。このため、必要な生活費をまかなう給付型奨学金や授業料目減免措置を大幅に増やします。