国会閉幕…論戦を逃げるな

平成2年2月の総選挙、私にとって2回目の選挙は、前年4月から導入された消費税への反対の大逆風の中で行われた。
当時の野党第一党社会党は、85→136と大きく議席を伸ばし、自民党は何とか過半数は確保したものの300→275と大きく議席数を減らした。私も一度は落選の誤報が流れるほどの辛勝で、まさに冷や汗ものの選挙だった。

だからこそ、選挙で消費税引き上げを訴えることの難しさは、嫌と言うほど分かっている。それでも、先週も述べたとおり消費税増税は必要なのだ。団塊世代が高齢者の仲間に入る時期を目前にして、これ以上の痛みの先送りは許されないからだ。

「増税の前にやる事があるだろう」との主張がある。全く正しい意見だ。国民に負担を求めるのだから、徹底的な歳出削減が求められる。
しかし「無駄を削ればお金はある。だから増税の必要はない」との誤ったメッセージで国民に誤解を与えてはいけない。10兆円規模の財源の捻出がそれ程簡単ではないということは、民主党の事業仕分けの結果を見ても明らかだ。

とは言え、社会保障給付の減額や消費税増税の議論に入るには、政府が身を削る姿勢なくして、国民の理解は得られないだろう。公務員給与の引き下げや議員定数の削減は喫緊の課題である。

にもかかわらず、国家公務員給与引き下げ法案は、与野党合意目前で継続審議となってしまい、人事院勧告に基づく引き下げも行われなかった。また、本格的な議員定数の削減は、一朝一夕には実現できないとしても、せめて、違憲状態を解消するための定数削減法案くらいは先の臨時国会で処理できたのではないか。
いずれも野田政権の大きな過失だが、今は失政を追求するよりも通常国会での早急な処理を望みたい。

加えて増税の環境整備として、景気の回復が求められる。
そのためには、当面の円高対策や景気の刺激策が重要だ。第4次補正予算や新年度予算の緊急経済対策も思い切ったものにしなければならない。
相手は30兆円とも言われるデフレギャップである。目先の財源論に予算規模を縛られていては、中途半端な効果しか得られないだろう。
持続可能な社会保障制度の確立という中長期的な課題と、短期的な経済対策を同じ土俵で論じるのは間違いだ。

社会保障制度のあり方や消費税を含む税制の方向性をはじめ、国会で議論すべき課題はいくらでもある。にも関らず、臨時国会は延長されることなく閉じられてしまった。

「法案成立のめどが立たないから国会を閉じる」のではなく「法案を成立させるために会期を延長する」のが筋ではないか。
政府与党が延長を求めず、すぐ国会を閉じてしまうのでは、「またしても、国会閉会による逃げ込みか?」と言われても仕方がない。

国会が閉会中でも、常任委員会等での審議は可能だ。
民主党には、法案提出前の非公式協議の呼びかけよりも、まずは党内の意見を集約し、開かれた場所での議論を期待する。